LINE公式アカウントを運用している中小事業者の中には、「友だちは増えたが、何を成果と呼べばよいのか分からない」「配信や機能追加の判断が毎回ぶれる」といった悩みを抱えるケースが少なくありません。
本記事は、LINE公式アカウントにおける『ゴール設計』を、施策論ではなく思考の整理として解説します。
ゴールがズレる典型パターン、売上ゴールの誤解、ゴールを複数持つときの考え方、短期・中期・補助ゴールの切り分けまでを構造的にまとめます。
読み終える頃には、自社にとってのゴールを言語化し、運用判断の軸を持てる状態を目指します。
studio-TH(弦巻 陽輔)
新潟唯一のLステップ正規代理店
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LINE公式アカウント運用における「ゴール設計」とは何か
LINE公式アカウントのゴール設計とは、「この運用で何が達成できたら成功とみなすか」を、事業側の意思決定に使える形で定義することです。
重要なのは、配信回数や機能活用の有無ではなく、運用の判断が迷わない『評価の基準』を先に置く点にあります。
たとえば「友だち数を増やす」は一見分かりやすい目標ですが、増えた友だちが来店や問い合わせに結びつかなければ、事業成果としては弱い可能性があります。
逆に、友だち数が大きく伸びなくても、既存顧客の再来店や予約の取りこぼし防止に寄与していれば、運用価値は成立します。
ゴール設計は、LINEを『何に効かせる道具』として位置づける作業であり、KPIはその後に置くべきものです。
ゴールと目的が混同されやすい理由
混同が起きやすいのは、LINE公式アカウントが「集客にも、リピートにも、問い合わせ対応にも」使える汎用ツールだからです。
その結果、「とりあえず売上を上げたい」「とりあえず友だちを増やしたい」といった『願望』が目的として置かれ、何をもって達成とするかが曖昧になりがちです。
ここで整理すると、目的は方向性(何の課題を解くか)で、ゴールは到達点(どの状態になればよいか)です。
たとえば目的が「予約の取りこぼしを減らす」なら、ゴールは「LINE経由の予約導線が定着し、電話対応の負荷が下がっている」など、状態として表現できます。
目的が抽象のままだと、配信の良し悪しが『雰囲気』で語られ、改善が積み上がりません。
ゴール設計が後回しにされやすい背景
後回しになる背景には、LINE運用が「始めやすい」ことが関係します。
アカウント開設、あいさつメッセージ、リッチメニュー、クーポンなど、すぐに手を動かせる要素が多く、運用が『作業』として先行しやすい構造です。
また、社内でLINEの位置づけが定まっていない場合、担当者が「何を成果として報告すべきか」を決めきれず、結果として友だち数や開封率など『見える数字』に寄ってしまいます。
しかし見える数字は、事業成果の代理指標にすぎません。
ゴール設計を先に行うことで、見える数字を「何のために見るのか」が決まり、運用の説明責任も果たしやすくなります。

ゴールが曖昧なまま運用すると起きやすいズレ
ゴールが曖昧な運用では、施策の選択・評価・改善が一貫しません。
たとえばクーポン配信、ショップカード、リッチメニュー改善、ステップ配信など、LINEには選択肢が多い一方で、どれも『それっぽく』見えてしまいます。
その結果、短期的に反応が良い施策に飛びつき、長期的に効かせたい価値(関係構築、再来店、問い合わせの質向上など)が置き去りになることがあります。
ズレの本質は、施策の良し悪しではなく、「何を成果と呼ぶか」が定義されていない点です。
ゴールが定まると、施策は『選ぶもの』になり、やらないことも決めやすくなります。
施策ごとの評価基準が定まらない
評価基準がないと、同じ数字でも解釈が割れます。
たとえばクリック率が上がったとしても、ゴールが「来店予約の増加」なのか「問い合わせ削減」なのかで、見るべき導線や次の改善点は変わります。
また、友だち追加が増えても、ブロックが増えているなら『獲得の質』が課題かもしれません。
このとき必要なのは、施策別のKPIを増やすことではなく、上位のゴールに照らして「この数字は何を意味するのか」を決めることです。
評価基準が定まると、配信内容の議論が「好み」から「仮説検証」に移り、運用が安定します。
改善判断が感覚論になりやすい
ゴールが曖昧だと、改善は「最近反応が悪い気がする」「他社がやっているから」になりがちです。
感覚論の問題は、判断が速いことではなく、再現性がないことです。
担当者が変わると方針が変わり、配信のトーンや導線がぶれて、ユーザー体験も不安定になります。
改善判断を構造化するには、少なくとも「誰の」「どの行動を」「どの状態まで」動かしたいのかを言語化し、その状態に近づいたかどうかで判断する必要があります。
ゴール設計は、改善の『議論の土台』を作る行為だと捉えると、優先度が上がります。

よくある誤解①|売上をゴールにすればうまくいく?
売上をゴールに置くこと自体は間違いではありません。
ただしLINE公式アカウントの運用では、売上をゴールとして掲げた瞬間に、評価が難しくなるケースが多い点に注意が必要です。
理由は、売上がLINE単体で決まらず、商品力、価格、在庫、接客、立地、季節性、他チャネル施策など多要因の合成結果だからです。
そのため「売上が上がらない=LINEが悪い」と短絡しやすく、逆に「売上が上がった=LINEが効いた」と過大評価もしやすくなります。
売上を最終成果として意識しつつ、LINEが担う『中間の到達点』をゴールとして定義するほうが、運用判断は安定します。
売上は「ゴール」ではなく「結果」になりやすい
売上は結果指標であり、運用の意思決定に使うには粒度が粗いことが多いです。
LINEでコントロールしやすいのは、ユーザーの行動(予約する、問い合わせる、来店前に情報を確認する、再来店のきっかけを得る等)や、接点の質(必要情報が届く、迷わず導線に乗る等)です。
したがってゴールは、「売上を上げる」ではなく「売上に寄与しうる行動が安定して発生している状態」として置くと、改善が可能になります。
たとえば「LINE経由の予約導線が月内で一定割合使われる」「問い合わせがテンプレ化され対応時間が減る」など、LINEの寄与範囲に収まる表現が現実的です。
売上直結を狙うと起きやすい失敗
売上直結を強く意識すると、短期の販促配信に偏りやすくなります。
その結果、ユーザーにとっての受信価値が下がり、ブロックや無反応が増えるなど、長期的な接点が毀損されるリスクがあります。
また、割引や特典に依存すると「特典がないと動かない層」だけが残り、利益や運用負荷の観点で持続しにくくなることもあります。
ここでの論点は、販促が悪いのではなく、販促を『主役』にするか『補助』にするかの設計です。
売上を意識するほど、LINEが担う役割(情報提供、導線整備、再来店のきっかけ等)を分解し、どこまでをゴールに含めるかを決める必要があります。

よくある誤解②|ゴールは1つに決めるべきなのか
ゴールは1つに絞るほど分かりやすい一方、LINE公式アカウントの実務では「単一ゴールにすると現場が回らない」こともあります。
たとえば、短期は集客を優先したいが、同時に既存顧客の問い合わせ対応もLINEに寄せたい、といった状況です。
このとき重要なのは、ゴールを増やすかどうかではなく、ゴール同士の関係を整理できているかです。
複数ゴールが許容されるのは、それぞれが役割分担され、優先順位と評価期間が明確な場合に限られます。
逆に、同じ配信で全部を達成しようとすると、メッセージが散らかり、誰にも刺さらない運用になりやすい点に注意が必要です。
複数ゴールが混乱を生むケース
混乱が生まれる典型は、「集客」「リピート」「採用」「認知」などが並列に置かれ、どれが優先か決まっていない状態です。
この状態では、配信テーマが週ごとに変わり、リッチメニューも何を押してほしいのか分からなくなります。
さらに、評価会議で見る数字が増え、結局「全部少しずつ良くない」という結論になりがちです。
複数ゴールを持つなら、少なくとも『同じユーザーに同時に求める行動』が矛盾していないかを確認します。
たとえば「今すぐ予約してほしい」と「まずは情報を読んでほしい」を同一配信で両立させると、導線が分散しやすい、といった整理が必要です。
役割分担という考え方
複数ゴールを扱う現実的な方法は、LINEの中で役割分担を作ることです。
たとえば、配信は短期の行動喚起、リッチメニューは常設の導線、あいさつメッセージは期待値調整、応答メッセージは問い合わせ削減、といった具合に『機能ごとに担う役割』を分けます。
この整理ができると、ゴールが複数でも「どの機能で何を達成するか」が明確になり、評価も分解できます。
以下は役割分担の考え方を整理するための例です。
| 要素 | 担いやすい役割(例) |
|---|---|
| 一斉配信 | 短期の行動喚起/重要告知の周知 |
| リッチメニュー | 常設導線(予約・アクセス・よくある質問) |
| あいさつメッセージ | 期待値調整(何が届くか/頻度/メリット) |
| 応答メッセージ | 問い合わせの自己解決/対応負荷の平準化 |

ゴール設計を整理するための基本フレーム
ゴール設計を難しくしているのは、「正解のゴール」があるのではなく、自社の状況によって妥当なゴールが変わる点です。
そこで有効なのが、ゴールを階層化して整理するフレームです。
具体的には、短期ゴール(直近で動かしたい行動)、中期ゴール(運用が定着した状態)、補助ゴール(中期ゴールを支える条件)に分けます。
この分け方をすると、短期の数字に一喜一憂しにくくなり、運用の『積み上げ』が可能になります。
また、LINEが担う役割の範囲を決めることで、他チャネル(Web、電話、店頭、SNS等)との分担も整理できます。
短期・中期・補助ゴールの切り分け
短期ゴールは、1〜4週間程度で変化を見たい行動に置くと扱いやすいです。
中期ゴールは、数か月単位で「運用が機能している状態」を定義します。
補助ゴールは、短期・中期を成立させる前提条件(友だちの質、導線の分かりやすさ、ブロック率の抑制など)として置きます。
この切り分けの利点は、売上のような結果指標を『中期の外側』に置きつつ、LINEでコントロール可能な範囲にゴールを設定できることです。
整理のための観点を挙げると次の通りです。
- 短期:配信や導線変更で動かせる行動(クリック、予約導線の利用、来店前確認など)
- 中期:運用が定着した状態(問い合わせがLINEに集約、再来店のきっかけが作れている等)
- 補助:中期を支える条件(友だちの属性が合っている、ブロックが増えにくい等)
LINE公式アカウントが担う役割の範囲
ゴール設計では「LINEで何でもやる」前提を外し、役割の範囲を決めることが重要です。
LINEは強い接点ですが、すべての情報をLINE内で完結させる必要はありません。
たとえば詳細説明はWebに置き、LINEは導線とリマインドに徹する、という設計も合理的です。
範囲を決めるときは、(1)ユーザーがLINEに期待すること、(2)自社が運用できること、(3)他チャネルの強み、の交点で考えます。
この交点から外れるものは、やらない・後回しにする判断がしやすくなります。
結果として、ゴールが『実行可能な言葉』になり、運用が継続しやすくなります。

ゴール別に変わるLINE公式アカウントの使われ方
同じLINE公式アカウントでも、ゴールが違えば「何を良い状態とみなすか」「どこに力点を置くか」が変わります。
ここを混ぜると、配信内容や導線が散らかり、評価もぶれます。
本章では、代表的な2つの方向性として「集客」と「育成・関係構築」を取り上げ、考え方の違いを整理します。
なお、業種によって最適解は変わるため、ここでは一般化しすぎず、判断軸として読める形に留めます。
集客をゴールにした場合の考え方
集客をゴールにする場合、LINEは「来店・予約・問い合わせなどの行動を起こす直前の背中押し」を担いやすいチャネルです。
このときの論点は、配信頻度よりも『導線の摩擦』です。
ユーザーが行動したいと思った瞬間に、予約方法が分からない、営業時間が見つからない、メニューが不明、といった摩擦があると機会損失になります。
したがってゴールは「行動が起きる状態」を定義し、補助ゴールとして「迷わない導線」「必要情報の整備」を置くと整理しやすいです。
また、集客は外部要因の影響も大きいため、LINE単体で集客数を断定せず、LINEが担う『行動の起点』をどこに置くかで評価するのが現実的です。
育成・関係構築をゴールにした場合の考え方
育成・関係構築をゴールにする場合、LINEは「継続接点を通じて、選ばれる理由を積み上げる」役割を担います。
このとき重要なのは、短期の反応よりも『受信価値の一貫性』です。
ユーザーが「このアカウントは自分に関係がある」と感じ続ける状態を作れるかが焦点になります。
ゴールの表現としては、「必要な情報が必要なタイミングで届く状態」「再来店・再購入のきっかけが自然に生まれる状態」など、関係の質を含む言葉が適します。
補足として、単価が高い商材や検討期間が長いサービスでは、即時の行動よりも不安解消・比較検討の支援が価値になりやすいですが、最終的には自社の顧客行動に合わせて定義する必要があります。

ゴールを決めきれないときの現実的な判断方法
ゴール設計は理想を描く作業に見えますが、実務では「決めきれない」ことが普通に起こります。
顧客層が広い、商品が複数ある、社内の期待が揃っていない、運用リソースが読めない、といった要因が重なるためです。
このときは、完璧なゴールを探すより、意思決定を前に進めるための判断方法を持つことが有効です。
具体的には、(1)やらないことを先に決めて範囲を狭める、(2)運用リソースから逆算して『維持できるゴール』にする、の2つが現実的です。
ゴールは、立派さよりも継続可能性が重要です。
まず「やらないこと」を決める
ゴールが決まらない背景には、「LINEでできることが多すぎる」問題があります。
そこで先に『やらないこと』を決めると、残った領域がゴール候補として浮かび上がります。
たとえば「採用目的では使わない」「毎週のクーポン配信はしない」「個別対応は営業時間内のみ」など、運用の境界線を引きます。
境界線は、ユーザー体験の一貫性にもつながります。
やらないことが決まると、施策の取捨選択が容易になり、ゴールも「この範囲で達成したい状態」として言語化しやすくなります。
検討の切り口を挙げると次の通りです。
- LINEで完結させない情報(詳細はWeb、店頭で対応など)
- 頻度・工数的に継続できない運用(毎日配信、過度なセグメント等)
- 期待値を上げすぎる対応(即レス前提、個別相談の無制限化等)
運用リソースから逆算する
ゴールは、達成したい状態であると同時に、維持できる運用の形でもあります。
担当者の稼働時間、制作体制、承認フロー、現場の協力可否が不明確なまま高いゴールを置くと、途中で運用が崩れます。
逆算の考え方は、「週に確保できる時間で、どの状態までなら再現性を持って運用できるか」を起点にすることです。
たとえば月1回の配信が限界なら、短期の反応最大化よりも、リッチメニューや自動応答など『資産化』しやすい領域にゴールを置くほうが整合します。
リソース制約は弱点ではなく、ゴールを現実に接続するための条件です。

まとめ|ゴール設計があると運用判断は迷いにくくなる
LINE公式アカウントのゴール設計は、施策を増やすためではなく、運用の判断軸を作るために行います。
ゴールが曖昧だと、評価基準が定まらず、改善が感覚論になり、短期の反応に引っ張られやすくなります。
売上をゴールに置く場合も、LINEが担える範囲に落とし込み、短期・中期・補助ゴールとして階層化すると、意思決定が安定します。
また、ゴールを1つに絞れないときは、役割分担で整理し、やらないことと運用リソースから現実的な範囲を定めるのが有効です。
最後に、自社のゴールを言語化するための確認項目を置きます。
- LINEで解きたい事業課題は何か(目的)
- その課題が解けたと判断できる「状態」は何か(ゴール)
- その状態はLINEの寄与範囲に収まっているか(範囲)
- 短期・中期・補助に分けると何がどこに入るか(階層)
- やらないことは何か(境界線)
- 週・月で確保できる運用リソースはどれくらいか(継続性)
自分では難しいと思ったら
LINE公式アカウントは、設定や配信を自己流で進めると
「時間をかけた割に成果が出ない」
という状態になりやすいツールです。
もし、
- 今の設定や運用が正しいか不安
- 配信しているが、予約や問い合わせにつながらない
- 無料のままで続けるべきか、有料に切り替えるべきか迷っている
- Lステップなど拡張ツールが必要か判断できない
このような悩みがある場合は、
一度専門家の視点で整理してもらうだけでも、次にやるべきことが明確になります。
「全部任せる」のではなく、
現状確認や方向性の相談だけでも問題ありません。
無駄な遠回りや不要な課金を避けたい方は、
お気軽にご相談ください。


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